夏の夜には、ハンマーダルシマーの音色が涼しげに感じますね
夏の夜にハンマーダルシマーを演奏していると、その音色がいつも以上に涼しげに感じられます。
細い弦を小さな撥で打つと、澄んだ音がきらきらと広がり、まるで夜風の中で小さな水滴が弾けているようです。暑さの残る夜にも、この音を聴いている間は、ほんの少し涼しくなったような気持ちになります。
ハンマーダルシマーには、ツィンバロンとは異なる魅力があります。
まず、とても助かるのが、僕ひとりでも持ち運べることです。軽い。楽。
ツィンバロンは大きくて重いため、運搬にはどうしても人手や車が必要になります。その点、ハンマーダルシマーは比較的小型で、僕ひとりで会場へ運ぶことができます。演奏の準備をするうえで、これは本当に楽です。
弦の数もツィンバロンより少ないため、調律にかかる時間も短くなります。もちろん、弦楽器ですから丁寧な調律は欠かせませんが、ツィンバロンを一から調律するときに比べれば、ずいぶん早く準備を終えることができます。
そして、ハンマーダルシマーからは、ツィンバロンよりも素朴で、古い時代を思わせる伝統楽器らしい響きがします。
初めて見るお客様も多く、演奏を始める前から、
「これは何という楽器ですか?」
「どこの国の楽器ですか?」
と興味を持ってくださいます。
音を出した瞬間に表情が変わる方もいます。楽器の形だけでなく、どこか懐かしく、素朴でありながら美しい音色そのものが、お客様の心を引きつけるのだと思います。
ただし、同じように弦を撥で打って演奏する楽器であっても、ハンマーダルシマーとツィンバロンは、決して同じ楽器ではありません。
響きも違えば、弦の配列や音域、撥の感触も異なります。ツィンバロンでは自然に弾けるパッセージが、ハンマーダルシマーでは相当に弾きにくいと感じることもあります。
「ツィンバロンで弾けるのだから、ハンマーダルシマーでも同じように弾けるだろう」
と思って演奏してみると、なかなか思いどおりにはいきません。
それぞれの楽器には、それぞれに合った指ならぬ「撥の動き」があり、その楽器ならではの音楽の作り方があります。似ているからこそ、違いがよく分かるのかもしれません。
僕はツィンバロン奏者ですが、それ以前に、弦を撥で打って音楽を生み出す「打弦楽器奏者」でもありたいと思っています。
だから、ツィンバロンだけでなく、ハンマーダルシマー、中国の揚琴、ペルシャのサントゥールなど、世界各地に伝わる打弦楽器の研究を、これからも続けていきます。
それぞれの楽器が、どの土地で生まれ、どのような音楽とともに育ってきたのか。そして、同じ打弦楽器でありながら、なぜこれほど違う響きを持っているのか。
知れば知るほど、新しい発見があります。
夏の夜、ハンマーダルシマーの涼やかな音色に耳を傾けながら、遠い土地でこの楽器を奏でてきた人々のことを想像する——そんな時間も、僕にとっては打弦楽器を研究する楽しみの一つです。
ハンマーダルシマーと僕。ツィンバロンとはまた違う、素朴で涼やかな響きを持つ楽器です。