ツィンバロン奏者の感想 『デュティユー/瞬間の神秘』

昨夜の読響さんの『デュティユー/瞬間の神秘』では、超硬質なバチ(前日まで何度も綿を巻き直して作り変えたバチ)をつかいました。おそらく天井の高いサントリーホールのようなステージで、反響板のないツィンバロンの音は上方向に飛び散ってしまうだろう…と思っていたので、なるべく芯のある音を…と思って試行錯誤して何度も作り変えました。僕的には普段はおそらく使うことのないような硬い硬い音のバチ。指が痺れるくらいの硬いバチ。初めての経験でした。

僕はリハーサル前に何度か動画サイトで『瞬間の神秘』をみたんですが、この弦楽器の数にして、ツィンバロンがこんなに大きな音で聞こえるわけない…これは録音した後、音量調整をしてるはず…と直感したのです。

『瞬間の神秘』のツィンバロンのパートは音量の幅が大きく、どの音量あたりを目指してバチを作るのか…が課題でした。硬質な音だけど、下品にならないように…と思って作ったのが昨日のバチでした。

たまにある話ですが、僕はツィンバロンをオーケストラと弾かせてもらってきた中で「そこんところppって書いてあるけど、聴こえないからfで弾いて‼︎」と指示されることもありました(カンブルランさんは楽譜にとても忠実で、作曲家が意図している表現を重視される方なのでむしろ繊細な部分のppを大切にされる方でしたよ)。

ツィンバロンの音色をわざと金属的にするためにバチ先に薄い鉛の板(釣りで使う錘)を忍ばせ、その上から綿を巻くという荒技を使う場合もありますが、音色的には僕はあまり好みではないのでそういうのはしないのですが。
あとパート譜の問題ね。ツィンバロンって、譜めくりするのが結構大変なんです。←これもツィンバロン界で今後の課題(ツィンバロンが大きいので譜面台が遠いのです。たまにバチ先を使ってめくることも…行儀悪い😅)。出版社さんはそういうツィンバロンのことを考えて極力譜めくりをしないようにツィンバロンのパート譜を4ページにまとめて作って下さったんだと思います。ただ、この『瞬間の神秘』は数小節まとめて大休符にして書かれている部分が多く、複雑な弦楽器群のガイドとなるメロディやタイミングを書き込みすることが困難でした。4ページあれば必ず1度は譜めくりするのだから、超休符を減らしてある程度、ツィンバロン奏者がフルスコアを見ながらその状況に合わせてガイド音を書き込み出来るようなパート譜(ゆったりした感じ)だと理想的だなぁと感じました。一応、ガイド音も少し書いてあるのですが、ツィンバロンがオーケストラのどの位置で弾くかによって、そのガイド音が全く聴こえない…ということもあるんだろうなぁ…というのが、今回の感想。

そこで僕はどうしたか。僕はリハーサル初日も2日目も弦楽器が全員違うリズム、音形のど真ん中で弾いていると、それはカオスに近く、結局、皆さんに迷惑かけてしまいました。そこで、リハーサルが終わってから、自分の位置から聞こえる出来る限りのガイド音を含めてオリジナルのパート譜を新たに作りました。なので、リハーサル後にスタッフさんはサントリーホールに向けて楽器の積み込みが始まる中、僕はひとりで淡々とオリジナルパート譜を作っておりました。

そんなこともありましたが、ツィンバロンがいち芸術楽器として、オーケストラの中に組み込まれたというのは、ツィンバロン奏者として、正直、こんな嬉しいことはありません。今後、この曲を演奏される機会が増え、ツィンバロンを弾いてみたいと思ってくださる方が増えることを僕は願っています。とにかく、この曲、本当に素晴らしいから。難しいけどね…

2026年05月21日